【38日目】嗚呼、アンビバレンツ!

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最後の県

今日から最後の県、香川県を歩く。

4県のうちで最も距離が短い。

その中に残りの22の札所が密集している。

あと何日ボクは遍路を歩けるだろうか。終わらせたくないという気持ちが日に日に強くなってる。

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万物を見通す目

昨夜はカワムラさんたちと白藤大師堂で夜を明かした。

カワムラさんの野宿地アーカイブから、今夜は71番弥谷寺いやだにじの手前にある「道の駅ふれあいパークみの」で落ち合おうという話になった。

むろんこれは約束ではないから、行かなくてもいいし先へ進んだって構わない。

松山以降、野宿で行こうと決めてからカワムラさんの先を見通す目に助けられている。

出発の準備をしていると、民宿青空屋に泊まっていたヤマムロさんが合流し、皆が出発するのを待った。

今日どこかで洗濯をしたいボクは一足お先に出発した。

盗まれた地蔵

朝の散歩をするばあさんと挨拶を交わす。世間話をしつつ一緒に歩く。

昔このあたりの地蔵堂の地蔵が盗まれたという話をしてくれた。

幸い戻ってきて、今はあの家の中に地蔵堂を作って祀ってあるんだよと、一軒のお宅を指さした。

地蔵を盗むって珍しい。よほど値打ちがあるのだろうか。

地域の皆さんは地蔵を拝むとき、このお宅にひと声かけるのだろうか。

とても興味深い。本来ならぜひ拝見したかったが時間と気持ちの余裕がなかった。

メシと洗濯

ひとつ丘を越えて67番大興寺に着く。

納経を済ませて休んでいるとカワムラさん一行が追いついてきた。お寺の方が全員にチオビタドリンクをお接待してくれた。

またボクが先に出発する。

国道11号に出、スーパーマルヨシセンターで朝メシを買う。レジのおばさんに尋ねるとランドリーはすぐ近くにあるようだ。

焦れったい

この前みたいに海パン一丁になって衣類を全て洗いたかったが、国道沿いかつ全面ガラス張りでさすがに無理である。

洗濯機を回しながら朝メシを食った。

洗濯と乾燥で1時間と少し。このロスがじれったい。10分で済む高速洗濯機とかないのか。

生乾きのタオルと靴下はザックに吊り下げて歩き始めた。

アンビバレンツ

次の68番神恵院じんねいん、69番観音寺かんおんじは同じ境内にある。一度に2寺減ってしまいグッとゴールに近づいてしまう。

時間のロスに焦れながら、ゴールは近づかないでほしいアンビバレンツ。

洗濯をしている間にカワムラさん一行に追い抜かれていたらしい。

川沿いの道でナカガワくんとすれ違った。68番神恵院、69番観音寺を打ち終えてきたらしい。その後立て続けにムラオカくん、カワムラさん、ヤマムロさんともすれ違った。皆付かず離れず歩いているようだ。

順番に2寺で納経をする。納経所は1つで2寺の朱印をもらい600円を支払った。

寺を出ると便意がきた。うまい具合にスーパーマルナカがあった。建物の外にあるトイレへ向かう。

間の悪い便意

トイレの真ん前に停めたクルマの中でカップルが弁当を食っていた。

衆目にさらされていては満足な排泄をできないボクはしばし待った。が、なかなか立ち去らない。

それどころか彼女のほうはトイレに入ってしまった。

やがて彼らは去り、ボクの便意も去っていた。

通りがかったうどん屋からカワムラさん一行が出てきた。辺りで評判のうどん屋らしい。ナカガワくんは先に進んだらしい。

見通しのきく道の先に70番本山寺が見えたころ便意が再発。

今度はクィックだ、即ピンチとなる。便意はいつだって間が悪い。

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野宿地へ

トイレを出るともう皆出発したあとだった。

国道11号の旧街道を縫って歩く。疲れが出はじめたが休める場所がなく、自販機コーナーで腰を下ろす。

「道の駅ふれあいパークみの」に着くとすでにムラオカくんとナカガワくんがいた。カワムラさんとヤマムロさんの姿はない。途中ではぐれたらしい。遍路道を歩いているならどこかで追い抜いているはずだが見かけなかった。

お盆期の日曜日で賑わう道の駅の様子を眺めるともなく眺めて休んでいたら、カワムラさんとヤマムロさんが遅れて到着し全員が揃った。

「道の駅ふれあいパークみの」は入浴施設もあるが料金は1500円と高額だ。が、これに1000円プラスすれば休憩所で雑魚寝ができるらしい。ヤマムロさんはその方法で一泊するという。

反社会的入浴

風呂には入りたいがちと高い。カワムラさんによれば道の駅には無料シャワーもあるという。場所を教えてもらったらなんのことはない、多目的トイレ内の掃除用のホースである。

完全にアウトだなと思いつつも、背に腹は変えられずカギを閉めて全裸になり水浴びをした。

さっぱりしたらメシとビールである。酷使した体へのささやかなご褒美。

道の駅のレストランでハンバーグ定食をアテにビールを呑んだ。

道の駅にはアスレチック施設も併設していて、そこへ通じるコンクリートの通路にテントを並べる。

夏の夜の嵐

寝入りまでの自由時間を各自が過ごすなか、急に突風に煽られた。

テントが吹き飛ばされるんじゃないというほどの強風である。

そしてふっと風がやんだかと思うと激しいスコール。

屋根の外で寝ていたカワムラさんを起こしてテントを移動させる。

アスレチック施設はすり鉢状の谷になっており、その底で幕営している遍路が1人いるらしい。

おそらくスコールが滝となって流れこんでいるだろうが、あまりに激しい雨足に身動きが取れず声をかけに行くことすらできない。

テントに横になる。真夏の夜のゲリラ豪雨の音が妙に心地よかった。

グッと湿度があがっていくのを感じた。

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