【32日目】舌の根の乾かぬうちに!

スポンサーリンク

高知から原付きで

朝、出発前にハギモリさんと話す。

ハギモリさんが地図に書き込んでくれた案内がとても役に立っていることを告げると、ボクのことを覚えているのかどうか、じっとボクの顔を見て「そうか……そう言うてもろたらうれしい」と目を潤ませた。

ハギモリさんは知人の遍路宿、善根宿の様子を見がてら、高知から原付きで来たらしい。

今回2泊した「道後あい」もハギモリさんの知り合いだったのだ。

-->

今日から野宿で

伊予鉄の始発駅、道後温泉駅から路面電車に乗り込む。

出発の間際にイシイくんも乗ってきた。

松山駅でJRに乗り換えて、今日はJR伊予和気駅からスタートである。

ボクはおおいに悩んだ末、ここから野宿でいくと決めた。

決めたとはいえ、日が暮れたその先で野宿できるという保証はない。

ひとまず今日はここから34kmの、54番延命寺を目的地とする。

ハギモリさんの案内によれば54番延命寺には通夜堂があるはずだ。

運良くいい場所を見つけられたら野宿、見つけられなかったとしても通夜堂だったらセーフだ。

瀬戸内海

朝してきたのに、駅を出てすぐ便意。

ボクは53番円明寺でトイレを借り、イシイくんは先へ進む。

道はすぐに海沿いに出た。いよいよ瀬戸内海だ。

見通しの良い道で、はるか前方にイシイくんの姿が見え隠れする。

追いついたり離れたりしているうち「道の駅風早の郷風和里かざはやのさとふわり」に着いた。

イシイくんはその手前の海岸で休んでいくという。

ボクは道の駅でアクエリアスの500ml缶を買って飲み30分ほど休憩をとった。

-->

無事帰る

国道196号を延々海に沿って歩く。

菊間の街に差し掛かる。瓦屋さんが多い。産地らしい。

お接待所のような場所があって誰もいなかったが、カエルをかたどった瓦素材の焼き物が並べてあった。

「無事帰る」にかけたものらしく、「ご自由に」とあったのでひとつ頂いた。

コンビニでイシイくんに追いつく。

ペースダウンとタイムリミット

時計を見ると13時。距離は残り13kmほど。

今日は54番延命寺の通夜堂を利用するかも知れないので、17時までに納経を済ませないといけない。

あと4時間で13km。

普段なら余裕の距離だが、午後はペースが落ちるから油断はできない。

慌ただしくおにぎりを食い、ボクが先に出た。

気持ちペースを上げる。遍路道が国道を離れて地道に入る。

JR大西駅あたりを通過。無理がたたり疲れが溜まってきた。

が、今日はどれだけ疲れても宿には泊まらないと決めている。

-->

痛恨のミス

54番延命寺の案内看板がチラホラ出てきた。もうすぐだ。

近くに銭湯やランドリーがないか探しながら歩く。餃子の王将があったのでここでメシ食ってとっとと寝てしまうのもいいな。

16時過ぎ、54番延命寺を打つ。

納経所で通夜堂の利用を申し出ると「うち通夜堂ないんよ」と言われた。

え、ハギモリさんが印を付けていたはず。

その場にへたり込んで遍路地図を確認する。

54番延命寺に印はなかった。

どうやら56番泰山寺たいさんじと勘違いしていたらしい。痛恨のミスだ。

他に野宿地は?

境内を掃き清めていたじいさんに野宿地について尋ねてみる。

この先の大谷墓園に東屋があると言うが、さすがに墓場で野宿は。

境内でテントを張らせてもらえないか尋ねると、門前の駐車場ならいいよとの事。

そこにしようかと思うが、街灯がなく夜は真っ暗らしい。

イシイくんが追いついてきた。

今日は今治の笑福旅館に泊まるらしい。

門前の駐車場を見にいく。

真っ暗は辛いがここしかない。自販機もあるじゃないか。

自販機の横の木枝から毛虫がぶらさがっていた。心が折れた。

改めて遍路地図を見ると大谷墓園を過ぎたところにハギモリさんが野宿可とした印がある。

野に安住する難しさ

そこに賭けたいが、ダメなら後がない。

弱さが出て笑福旅館にとりあえずの予約を入れた。野宿する可能性もあるのでキャンセルする場合はまた連絡すると伝えた。

大谷墓園は丘の上にあって公園のように整備され、じいさんが言うように東屋もいくつかあるが、雑草が多く虫の気配があった。

ハギモリさんが野宿可とした公園も虫の気配がありボクには無理だった。結局安住の地は見つからなかった。

金が解決する安住

イシイくんと笑福旅館に投宿する。

風呂に入り洗濯をする。ただそれだけのことがとても贅沢だった。

開き直ってイシイくんと呑みに出る。

今治だったら焼き鳥だろうと店を探すが、この辺の定休日に被ったらしくどこも閉まってる。

ようやく南蛮亭という店に入った。

これが何を食っても美味かった。夢中で食って写真が1枚もない。

酒呑んでバカ話に興じていられるのは、安全な場所で眠れる安心感があるからだ。

本来ならば野でストイックな夜を過ごしていたはずなのだ。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

Are You Feel Good