念願だった谷岡食堂、初来訪である。
場所は高知の須崎。
知る人ぞ知る、サバ寿司が評判のお店である。
港町特有の、ネコの抜け穴のごとき路地小路を奥へ奥へと。
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「本当にあるのか、このままだと海に出てしまうぞ」
そう不安を覚える頃合いにお店はある。
それにしても見てよこの店構え!
ド渋いにもほどがあるでしょう!
いわゆる「食堂」と認識させる要素をほぼ持たない外観。
これを食堂だというなら、それはもはや神様の忘れものである。
ここのサバ寿司、あっというまに売り切れるため幻といわれている。
11時半に入店すると、
あ、あったサバ寿司!
これが谷岡食堂のサバ寿司。
他所のとは見た目からして違う。
ほんのりピンクがかったサバの身は、酢の〆が浅い証拠。
傷みの早いサバは酢で深く〆るのが通常だが、ここは新鮮な清水サバしか使わないのだそう。
浅いとはいえ、口に入れればまず酢のパンチがガツンとくる。
続いてサバの身がホロホロと崩れて、とろけるような舌触りに変わる。
「これぁメッタメタ美味い!」(スーパーくいしん坊©︎ビッグ錠)
中華そばが出てくる前に完食してしまった。
で、当然のようにこの中華そばもイージーな作りではなくレベルが高い。
魚介ダシと醤油ダレの合間を漂うほんのりとした苦味。
これがいいコクになってる。
以前にもどこかで出会ったことのある味だが、なんの苦味なんだろう?
お店は女性2人で切り盛りされてる。
このお2人がなかなかに味がある。
そこはかとなく気品が漂っているのだ。
イメージとしてはちょうどアニメ「魔女の宅急便」に出てくるニシンのパイを焼く奥様と、そのお手伝いさんのお婆さんのような雰囲気である。
店内のポットに入ってるのはハブ茶である。
そういえばすぐ近くの八千代食堂もハブ茶だったな。
八千代食堂の女将さんもまた、ここは京都の料理旅館かと思わせる気品溢れる方だった。
ボクは須崎は文化レベルが高いと断言する。
まさかたまたまこの2軒だけ、というわけでもあるまい。
須崎のこの文化レベルの源流ってなんなんだろう。
もしかして本当に神様の忘れものなんじゃないかと思えてくるのである。
サバ寿司は、といえば、
ボクらがお店を出る頃にはもう売り切れてました。
マボロシ〜!