Contents
イケてるガイド本がないので、自分で作ります
新しいコンテンツ、「街のポテンシャル」始めました。
何かっていうとこれ、手製の街歩きガイドである。
昔から観光ガイド本の類が好物なのだが、日本のガイド本って広告とタイアップまみれだから、当たり障りなくてつまらない。
観光地やグルメ写真に添えられる一文も、ライターが匿名で書いてて作家性がない。
そもそも書き手の主観なんて求められてないから、コピペしたような味気のない文章ばかりが並ぶ。
「良い旅を」。
その理念が感じられないガイド本ばかりに辟易していた頃、ある言葉がよぎった。
よく聞くほら、あれ。
「欲しいものが世の中にないなら、自分で作ればいい」
-->
作家性のあるガイド本
作家性のあるガイド本が作りたい。
そう思ったのが20代後半だから、構想何年なんだよって話。
、を今ここでするつもりはない。
詳細なコンセプトや、かける思いは別途ページを設けるとして、早速始めよう。
読まれた方が、実際に当地を歩かれるわけでないにせよ、読み物として耐えうるものを心がけていきたい。
好事家が作る、好事家のための街歩きガイド。
愛称は「街ポテ」でよろしく願いたく候。
記念すべき初回を飾る街は….
ジャン!
山口県周南市、徳山駅界隈である。
徳山チョイスに意図はない。
強いて言うならこの徳山がボクの人生にかすりもしなかったから、だろうか。
徳山と「福山」
ところで、同じく山陽新幹線の停車駅がある広島に「福山」という駅がある。
徳山と「福山」、響きも字面もよく似てる。
お互いがお互いの印象を打ち消しあい、どっちがどっちか判然としないまま、ボクは奈良の高校を卒業し、大阪の専門学校に入学し、恋をし、破れ、人を騙し、騙され、大人になり、結婚をし、山あり谷ありこうして今、高知で生きてる。
「福山」を訪れるまでは。
※福山を訪れた時の記事はこちら→日帰り旅、「極限芸術2」から鞆の浦へ
先に実体をともなったのは「福山」
ボクは「福山」の街を歩いた。
駅前で飯を食い、酒を呑んだ。バスにも乗った。
思い出ができると「福山」は実体をもって記憶に収まった。
そして徳山を忘れた。
何事にも陰と陽があり、ボクの中でたまたま徳山が陰になっただけのこと。
徳山に非があるわけじゃない。
でも、だからかも知れない。今回徳山を選んだのは。
現地に行かずに作る、街歩きガイド
早速ネットで徳山にチューンインしてみよう。
徳山はもともと、独立した徳山市だったが2003年に隣接市町村と合併、周南市となった。
「徳山」の名はいまや駅名や大学名などに残すのみで、地名としては残っていないという。
驚きである。
町名ですら消えるとなればモメる昨今、市の名前が消えたのである。
旧徳山市民は抵抗しなかったのだろうか。
ボクは旧徳山市を知らぬ。
本稿では東限を末武川、西限を富田川、北限を山陽自動車道として仮の旧徳山市に見立てて、ぶらぶらとネット逍遥してみたい。
街ポテは実際にその街に訪れて書いた紀行文ではない。
ボクのフィルターを通して、ネットに散らばる情報をキュレーションしたものである。
徐々に姿を見せ始める徳山の街
呑み屋、ご当地グルメ、B級スポット、昭和レトロなど関心のあるワードと、徳山の街名を組み合わせて検索してみる。
検索ワードって気まぐれだ。
求める情報はすぐ出てこないくせに、別のワードで検索してたらシレッと引っかかってきた。
どうやら出るらしいのだ、駅前に屋台が。
にわかに色めき立つ。
2012年に書かれたブログによると、最盛期には20軒、当時で7軒の屋台があったらしい。
駅前にずらっと並んだ屋台は壮観だったろう。
その中で、最後まで残ったのが「まるとく」と「太陽軒」である。
-->
【1】大衆酒場屋台まるとく
いかんせんタイミングが遅かった。
駅前整備を理由にまるとくは2016年末をもって屋台を撤退、2017年1月からテナント入りして大衆酒場としてリニューアルしていた。
それでもネイティブに愛される古参呑み屋に変わりなく、おでん、鉄板焼き、ラーメンといった名物は屋台時代から変わらぬ味と値段である。
17時オープン。
昼からやってるなら、徳山に着いてまずご挨拶の一杯はここだったな。
【2】屋台 太陽軒
こちら太陽軒は、2017年6月に投稿されたツイートで、屋台として営業していることを確認。
火曜、金曜のみの営業とある。
しかしこれを書いてる時点ですでに半年近くたってる。
今のところ確実な閉店情報は見かけなかったから、現存している可能性はある。
行くなら急がれよ、明日はわからない。
【3】まつき食堂
11時オープン。JR徳山駅から徒歩5分という立地。
徳山に着いてまずご挨拶の一杯、ボクはここに決めました。
食堂というくらいだから、中華そばや丼ものも食べられるけど、ここは焼肉&ホルモンで昼酒が正解である。
お店の佇まいも素晴らしい。
こちらのサイトでお店の雰囲気がよく伝わります。
【4】テアトル18番街
映画館の入っていたビル地下の食堂街がテアトル18番街である。
オフィスビルなんかにもよくある地下食堂街とか名店街とか魔窟っぽくて好きだ。
いくつか入ってる飲食店の中で、ダントツでネット情報が多いのが洋食のアラスカ。
ランチ時には行列もする老舗である。
王道のハンバーグやミンチカツも捨てがたいけど、ボクはInstagramで見たドライカレーのカツのせに惹かれるなあ。
【5】食事処七味
Googleマップとストリートビューを使ってさらに深く街へ潜る。
ネットに引っかからない情報を求めて街を散策する。
ここもそんなローラー作戦で拾い上げたお店。
JR徳山駅からは2.5kmほど。
徳山散歩の目的地にほどよい距離である。
散歩の折り返し、喫茶感覚で瓶ビールを注文。アテはブタ汁か焼き飯だな。
唯一あった七味のブログ記事。
オカズケースのデザイン、飴色の品書きに心打たれます。
-->
【6】凡浪(カレー/喫茶)
「ぼんろう」と読む。
カレー推しでの紹介だが、専門店ではなく喫茶店。
定番のビーフやシーフードに混じって、もやしとベーコンのカレー、コーンとえのきのカレーなど、珍しくて好事家心を刺激する。
激辛×ルー大盛りとなる「プッツン」はプラス300円。
ネーミングが面白い。
【7】赤鬼(喫茶/食事)
なにげにGoogleマップを眺めていると、赤鬼なる喫茶店を発見。
ちょっと変わった名前だなあとストリートビューしてみたら、これが大アタリ。
看板の「喫茶&焼めん、ぞうすい」に釘付け。
焼めん?ぞうすい?
赤鬼なのにお店の屋根瓦は青だし、ツッコミどころだらけ。
実はこの焼めん、下関のご当地グルメ瓦そばのパロディメニューだ。
瓦そばとは、茶そばをメインに、錦糸卵、牛肉、海苔を、アツアツに熱した瓦にのせ、レモンやモミジおろしを薬味に、和風つゆにつけていただく風流な食べ物。
赤鬼の焼めんは、ワカメを練りこんだ緑色のめんに、錦糸卵、牛肉、海苔をジンギスカン鍋にのせ、和風のつゆにつけていただく謎の食べ物である。
ぞうすいも7種類あるという。看板に書くだけのことはある。
【8】竹の第(居酒屋)
創作料理とおでんが旨いと、ネイティブに評判の居酒屋。
おでんダネは鮭団子やトマトなど珍しいものがある。
鮭団子ってどんなだろう。
酒器に錫製を用いたりと、気の抜けないお店である。
喧騒からワンクッション隔てた場所にあるから、大衆酒場の猥雑な気分でない時はこちらの暖簾をくぐられよ。
【9】スター食堂
いわゆる大衆食堂だが、特筆すべきが中華そば。
スター食堂は徳山駅界隈に3店舗を構えていて、ここの中華そばは「スター系ラーメン」と呼ばれている。
支店名はそれぞれ「第二スター」、「第三スター」と、やけに事務的なのも面白い。
スター系についてはこちらが詳しい。
【10】白十字(喫茶)
「はくじゅうじ」と読む。
入り口に門扉のあるヘビーウェイトな構え。
オリジナルのマッチやお冷グラスなど、正統な昔ながらの喫茶店。
当然のようにBGMはクラシック。
ご参考まで。
-->
【11】カフェクラブミル(喫茶)
ドイツパンのモーニングが有名な老舗喫茶店。
迷路のように配された座席は半個室になっており、プライベートな時間を過ごせること請け合い。
駅前にあるので、列車の待ち時間にもちょうどよい。
入り口のドアが2つあるが、迷うなかれ右が正解だ。
ご参考まで。
【12】純喫茶たまゆら
食器、調度品、紙ナプキンにいたるまで、細部にいきわたる美学。
和洋折衷の、妓楼を思わせるムード。
店内には坪庭まである。
まるでひと鉢の盆栽をみるように、店主の美学が底光りしている。
ご参考まで。
【13】回天訓練基地跡(戦争遺産)
人が中に入って操縦して、そのまま敵艦に体当たりするという人間魚雷。
それが「回天」である。
徳山沖の離島、大津島には回天の訓練基地跡地が残っており、今も穏やかな瀬戸内海で、静かにその狂気を伝えている。
大津島には4箇所の停泊所があり、回天訓練基地跡地へいくには馬島地区で下船する。
運賃は徳山港から乗船する場合はどこで下船しても片道710円(大人)である。
フェリーはJR徳山駅南口からすぐの徳山港フェリーターミナルから1日7往復。
同島にある回天記念館もあわせて訪れたい。
【14】文化湯(銭湯)
銭湯はファサード。入り口の顔こそ肝要である。
ここは、駐輪場の藤棚、屋根より高いフェニックスの木、マルに「ゆ」の点灯看板、左右から出入りする目隠し玄関など、どの意匠も文句なく美しい。
夏ならサクッと早風呂して、サンダルつっかけて、日のあるうちから太陽軒に陣取るのもいいですな。
色んな角度でファサードが見られます。
【15】謎のトンネル
いったいこれは何?
高速沿いの小道が途中からトンネルになってるように見える。
しかもかなり距離があるようだ。
ストリートビューは小道の途中で切れてる。
トンネルの正体をご存知の方いらっしゃれば、Twitterにてご一報下さい。
徳山の地酒
山口県は酒どころだ。
徳山地区にしぼっても3軒の酒蔵がある。
なかでも気になったのが株式会社はつもみぢの代表銘柄「原田」、の別版「裏原田」だ。
ラベルは「原田」のものを裏返しにしてあってかっこいい。
日本酒は基本ジャケ買いです。
編集後記
街ポテは、「あれ?今月いつもより給料が多いな」って時に、オトコがふらっと行くひとり旅を想定してる。
一泊二日のコンパクトな旅。
行き先はあまり重要ではない。
電車や長距離バスの車内で本を読んだり、音楽を聴いたりする。
知らない街を歩く。知らない街で呑む。
そんなちょっとだけ豊かな時間のお供に、この街ポテがなれれば幸いである。
徳山は老舗喫茶に優良店がおおく、今回若いカフェ店にまで手が回らなかった。
特に純喫茶たまゆらは徳山の文化水準を見せつけられた思いである。
掘ればまだ色々出てくるだろう。
これが街のポテンシャル。