工業製品や軍払い下げ品といったジャンクから巨大マシンを製作し、ラジコン操作で互いに戦わせて破壊するという見世物的パフォーマンス集団、「Survival Research Laboratories」(サバイバル・リサーチ・ラボラトリーズ、以下SRL)をご存知だろうか。
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Contents
上演禁止!危険すぎるパフォーマンス
首謀者マーク・ポーリンにより1978年に設立されたSRLは、そのあまりに過激で危険なパフォーマンスから本国アメリカでは何度も上演禁止になっているいわくつきのアウトサイド集団である。
火炎を放射し、角材を高速で射撃、さらに上演中は異常騒音をともなうのである。
マーク・ポーリン本人はロケット燃料の取扱中に事故で右手指を吹き飛ばしてしまっている。
仕方なく空母の甲板で?
当然ながら公共の場で上演できるはずがなく、航空母艦の甲板でパフォーマンスを行ったと聞いたことがある。
真偽はわからないが本物の爆弾を使ったという話も。
ロボットがまだガキのオモチャだったころ
余談になるが80年代、ロボットといえばまだガキ供のオモチャだった。
例えば「プラレス3四郎」は、プラモデルにマイコンと呼ばれるコンピュータを搭載して遠隔操作で戦う格闘マンガで、プラモデルゆえに「モバイル可能なロボット」という設定が画期的だった。
スマホもニンテンドーDSもない当時のガキ供がモバイルできるものと言えばオモチャだけである。
家族旅行の写真では必ず片手にオモチャをにぎってる。
スプリットヘッド
Marlborough ContemporaryMenuより
大人の悪ふざけのパフォーマンスアート
そんな身近にあるオモチャにちょっとしたカラクリを施せば動き出してバトルするという、現実の延長線上にある世界観に興奮したのである。
ちなみにミニ四駆のバトルマンガ「ダッシュ!四駆郎」は、実際に売られてるミニ四駆さえあればマンガの主人公たちと同じように技が競い合えるとあってガキ供はさらに狂喜乱舞するのだった。
SRLはこうした80年代の「ガキどものオモチャ」を、大人が悪ふざけでパフォーマンスアートに昇華したと言えなくもない。
スパインロボット
Marlborough ContemporaryMenuより
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実現するはずがないといわれたSRLの日本公演!
ボクがSRLを知ったのは1999年。
当時タワーレコードでバイトしていて、常連のお客さんに教えてもらったのである。
爆音ノイズのロボットバトルが東京の代々木公園であるという。
日本でできるわけがないといわれた奇跡の公演だから観たほうがいいと。
ロータリージョーズ
Marlborough ContemporaryMenuより
前代未聞の世紀末マシーンサーカス!
主催したのはNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)。
会場は国立代々木競技場、屋外特設会場。
3000人限定の先着順、入場は無料。
題して「世紀末マシーンサーカス」!
ミスターサタン
Marlborough ContemporaryMenuより
元80年代のガキであるボクは矢も盾もたまらず急遽休暇をとって1999年12月23日、東京へ向かったのである。
SRLのスチームパンクな世界
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安全を約束できない危なすぎる公演!
「会場内は禁煙です。本公演では大音量、低周波、素早い光の明滅などが行なわれます。ご気分の悪くなられたお客様は至急お近くのスタッフまでお申し出ください」のアナウンスが流れるものものしい雰囲気。
マシンの至近距離にいるスタッフは耳栓をしたうえに防音ヘッドホンをあてる。
鼓膜が破れるのを防ぐためだという。
ピッチングマシーン
Marlborough ContemporaryMenuより
轟音にもだえるタコ
動画のパート3冒頭で出てくる、鉄パイプが高温で真っ赤になったマシンはパルスジェットといい飛行機のエンジンのように甲高いすさまじい轟音を出す。
パイプの先にひっかけられてもだえるタコが、轟音をビジュアル化している。
BGMというか音響をデザインしているのはアメリカのノイズ・バンドThe Hatersのジェラルド・ラーセンである。
CDにもなってるみたい。
失神者もでる騒動に!
どこまでがBGMでどこからがマシンの放つノイズなのか判然としない。
ときおり静かになったなと思うと耳では何も聞こえてないのに、着ている服や内臓が激しく振動することがある。
超低周波、あるいは超高周波である。
静かな爆音に脳ミソまで揺さぶられて気分が悪くなる。
頭をヤられて全裸になる者が出たり、木に登っていた見物人が音で失神するハプニングもあった。
駆けつけた救急隊が木から下ろすのに難儀していた。
ランニングマシーン
Marlborough ContemporaryMenuより
SRL来日の陰に当時のバッドテイストブームか?
SRLのHP、公式Facebookを見ると2018年現在も活動は続いているようである。
それにしても当時のバッドテイストブームもあったとはいえ、ICCはよくぞこんなイベントを日本で開催できたものだ。
しかもチケットフリーである。
マシーンは全て海運したというから費用も相当かかっているはず。
いったいどこからカネがでたのか。
あれから20年たちコンプライアンスや倫理がひどく窮屈なものになった今、日本での再演はまさに闇夜に針穴を通すウルトラCであろう。
アートに理解のある若きIT億り人は、ぜひとも無人島をば購入しそこに再びSRLを招聘していただきたい。