9日間にわたる酒の狂宴「土佐のおきゃく」。
この祭りが始まれば土佐に春がくる。
期間中はめくるめく呑んべえパーティの波状攻撃で、「日曜市の台所」もそのひとつ。
入場料が8000円と高額ゆえ敷居が高いですが、ひょんなことから潜入してきました。
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皇族の御定宿である「城西館」の大広間に、フェイクではない本物の日曜市をポップアップさせるというまっことブッ飛んだアイデアである。
言うはたやすいが、実現してしまったのがすごい。
主宰者は幻の名著「土佐の味 ふるさとの台所」を復刻したことでも知られるハタケナカトモコさん。
イベントでは再現した日曜市をそぞろ歩くこともできるし、ビュッフェ形式で「土佐の味 ふるさとの台所」に掲載された郷土料理をいただくこともできる。
つまりこの2つを同時に楽しめるのが「日曜市の台所」である。
コンニャク稲荷やタケノコのにぎりなど、他県では目にすることのない土佐名物の田舎寿司。
日本酒との相性グンバツ!「どろめ」。
この山芋ぼっかけ激ウマでした。ネギや魚肉がミックスされて食感もよし。
酒、ビールはむろん呑み放題である。
土佐の西から東まで、地酒を網羅しちょります。
亀泉のこれ、呑んでみたかったのよね。
成分表をそのままラベルにしてるのもクールでしょ。
生酒ということで火入れをしてないから、ワイルドな米の甘みがガツンとくる味、なおかつ薫りがしばし口中にとどまる豊かな味わい。
日本酒ってボクは究極のご当地モノだと思ってて、地の肴との組合せはもちろん、地の空気や地の言葉が飛び交う中でこそポテンシャルを発揮するものですよね。
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会場を見渡す。
披露宴会場を日曜市が取り囲んでる、と言えばわかりやすいか。
良くも悪くも土佐っぽさがモロに出る「土佐のおきゃく」において、この「日曜市の台所」は非常にハイソな雰囲気である。
ほとんどの方がシラフスタートだし、酒が入って大声でがなりたてるテーブルもない。
ちょっと只者じゃない紳士淑女が集う社交場といったおもむきである。
かといってスノッブ臭さは一切なく、ボクのような100%PURE馬の骨に対しても皆さん気さくに接して下さる。
城西館の料理長などは会場各所をまわり、ボクのような雲助にも丁寧に名刺を下さる、そんな和やかでピースフルなイベントでした。
そんな料理長と主宰者ハタケナカトモコさんのトークショー。
御二方ともに非常に話芸達者ですな。
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お話の中で印象に残ったのが、オリジナルの「土佐の味 ふるさとの台所」が出版された1987年当時、高知県には53もの市町村があって、それぞれに地産品や郷土料理があったという話。
それが平成の大合併で自治体の数が減り、各々のアイデンティティは希薄になってしまったんだろうな。
「土佐の味 ふるさとの台所」復刻の意義は大きい。
さてさて、ボクのようなミスフィッツがなぜ、土佐のハイソな社交界を跳梁することができたのか。
理由は日曜市の人気店である「みっちゃんち」。
当店、「日曜市の台所」へは初出店だ。
この「みっちゃんち」、実はカミさんがなじみにしていて今回お手伝いをすることになったのである。
ボクが体調を崩したとき、自家製のタヌキ油をいただいたりとお世話になっている。
みっちゃんは「山の上」、「おじいちゃんのかまど」、「幸せのわらび餅」、といったキーワードを巧みに使いこなし製品をブランディングするスーパーばあちゃんなのである。
カミさんはカミさんで、移住者として土佐の魅力をうんぬん、活性化をうんぬんなぞ、もっともらしいセリフでもって会場の喝采を浴びていた。
土佐では男勝りの強い女性を「はちきん」と呼ぶが、まったくもって恐るべしである。