高知の至宝、柏島をオワコンにさせないために

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目を疑わんばかりのエメラルドグリーン、これはミネラルウォーターですよねとジョークの一つも飛ばしたくなる透明度。

高知が誇る柏島の海、その美しさへの賛辞である。

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ブログやSNSで柏島を見た方も多いだろう。

そのぶっ飛んだ光景が日本の高知だと明かされるや、口の端に感嘆符である。

しかし皆が本当に驚いたのはそれらの写真のほとんどが「未加工」だったことだ。

スマホアプリなどによる「盛り」が当たり前である昨今で、「盛り」を必要としない驚異の光景がネット上でシェアされていった。

それを見て実際に現地に赴いた者は、スマホで見た憧憬と、目の前に広がる光景に落差がないことに心揺さぶられるのだ。

そしてまた1枚、盛っていない写真がSNSにアップされる。

こんなキャプションとともに。

「柏島すごいよ!ダマされたと思って行ってみて!ガッカリさせないよ!」

で、今回はガッカリしたという話。

いや、柏島は相変わらず美しいのだから、正確には柏島に遊びにくる人たちの質の低下に閉口したという話だ。

少々長くなるが、順序立てて話そう。

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かつては容易に近づくことができなかった秘境、柏島

今でも柏島は秘境と表現されることが多いが、つい最近までは本当に秘境然としていたのである。

柏島は大月半島の先端に位置し、本土とは橋で繋がっている。

半島とはすなわち尾根の塊であるから、この尾根越えのやっかいさこそ秘境たる由縁であった。

四国の「エル・カミニート・デル・レイ」とよぶべき険道!

柏島へ続く県道43号の旧道をストリートビューで見ていただきたい。

尾根の山腹を巻くようにユリ道が続いている。生活道だった踏み跡をアスファルトで拡張しただけのささやかな車道である。

ガードレールの無い箇所が多く、片側は常に崖だ。

ボクもクルマで通ったことがあるが、対向車が来たら一発アウトのブレイブメンロードである。

「釣りバカ日誌」のロケ地にもなった柏島

2003年公開の「釣りバカ日誌14 お遍路大パニック!」では柏島ロケが行われている。

大所帯のロケバス隊がここを通過した際、西田敏行さんら俳優陣はじめスタッフを震撼させたと聞く。

まさに四国の「エル・カミニート・デル・レイ」である。

「釣りバカ日誌14 」公開と前後して、同じ2003年、この険道を一気に短縮する大堂トンネルが開通する。

そして2010年には最後の難所だった一切地区に柏島トンネルが開通。

この2本のトンネルにより柏島へのアクセスは格段に良くなった。

この時期までの柏島はダイバーと一部の人しか知らない楽園だったようだ。

柏島の橋のたもとには無料の柏島キャンプ場があり、長逗留のバカンスができたらしい。

ボクが柏島を知ったのがちょうどこの頃である。

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龍の巣が晴れてゴリアテが上陸してきた

ボクが初めて柏島を訪れたのが2014年。

残念なことだが噂に聞いていたとおり、柏島キャンプ場は2011年に閉鎖されていた。

理由はゴミ問題、夜間の騒音、路上駐車、橋からのダイブ、船とのニアミスなどなど、全て海水浴客のモラルの欠如が原因である。

柏島で金を落とさないキャンプ客、日帰り客のこうした迷惑行為に対して住民は我慢を強いられ、大月町は業者を雇って放置されたゴミを処分せざるを得なかったらしい。

ひどい話である。

結果、柏島キャンプ場の閉鎖。

代替策として大月町はそのすぐ近くに「竜ヶ浜キャンプ場」をオープン。

この「竜ヶ浜キャンプ場」、段々畑状に崖に取り付いたウッドデッキにテントを張るという異様なスタイルと、1泊5000円という金額に当初は面食らった。

今思えば大月町にとって、訪れる者を選別したいという思いもあっての価格設定だったように思う。

右肩上がりの知名度に反比例して低下する客のモラル

先述のように、柏島へ続く県道43号が前線開通したのが2010年。

ちょうどその頃台頭してきたのがTwitterやFacebook、Instagramである。

これらSNSにより柏島は爆発的なスピードで世に知られるようになる。

2014年の夏、ボクはシュノーケルをつけて初めて柏島の海へ入ってみた。

カラフルな熱帯魚の群れ、海の中を泳ぐエイやイカ。

想像を超える体験に興奮したボクは以降、毎年のように柏島に通うこととなった。

そして2017年夏、高知県民となったボクが見たのは変わりつつある柏島だった。

まず平日にもかかわらずかなりの人出なんである。ツアーみたいな大型の観光バスも乗り付けている。

柏島の主たる海水浴場は2つある。

まずは橋の下のエメラルドグリーンのエリア。写真でよく見るのはこちら。

ただしこちらは遊泳禁止という情報もあるので注意したい。泳いでる人は結構いたのである程度は許容しているのかも知れない。

今回は干潮で水量少なめだったので、ボクらはもう1つの場所へ。

橋の少し手前の崖を下りた所にあるビーチだ。今回の写真は全てこっちのもの。

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浜に放置されたBBQグリル、極悪駐車のオンパレード

ビーチへ下りるとまず目についたのが放置されたBBQグリルだ。

この写真の右手に写っているのがそれ。

このビーチはいつも人がおらず、ボクら夫婦の間では便宜上「柏島のプライベートビーチ」と呼んでいるほどだったが、ここも人が多かった。

これまで見たこともなかった放置ゴミが目につく。BBQグリル、ゴミ大袋、割れた瓶のカケラなどが散乱していた。

シュノーケリングしていると海底に沈むビール缶も散見された。

極め付けは帰り際のこと。

ボクらはこの写真の上部に見える県道の待避所にクルマを停めていた。

帰ろうと思ったら待避所が凄いことになっていたのだ。なんと二重駐車のオンパレード!

奥にあるボクらのクルマが出庫できない事態に。

幸いにも2つ隣のクルマがちょうど帰るところで声をかけてくれて、空いたわずかなスペースを使ってなんとか出すことができた。

ひどいものだ。他人の迷惑などおかまいなしである。

遊びに行かれる方は是非ご注意願いたい。

この時、二重駐車で出口を塞いでいた大型車VOXYに、ボクは「天空の城ラピュタ」に出てくる戦艦ゴリアテを重ね合わせていた。

アニメ劇中にこんなセリフがある。

「あの雲が晴れなければ、やつらはラピュタに上陸できなかったはずなんだ」。

まさに柏島の雲が晴れなければやつらは柏島に上陸できなかっただろう。VOXYみたいな大型車にあの険道を踏破することはできない。

「里海」という考え方

人間が手を入れることで、暮らしを支える豊かな山のことを「里山」と呼ぶ。

ここ柏島ではネイティブやダイバーたちによって守ってきた「里海」という考え方がある。

柏島の海の美しさの秘密は、プランクトンの少ない黒潮である。

これまでも、これからも柏島は黒潮の海流とともにあるのだろう。

やれ、どこそこの掛け軸が美しいと聞けば、有給休暇で見物に訪れてはひとしきり感心し、家族全員がスマホで撮影したことを確認したら、掛け軸に泥を塗ってから帰路につく痴れ者たちよ、子は親のやることが無条件の正義であるぞ。恥を知れ。

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