高知県の四万十町にある秘境「小鶴津・大鶴津」をチャリで探索してきた。
読みは「こづるつ・おおづるつ」。
陸の孤島、志和の集落をさらに南下した海沿いの廃村であり、断崖にへばりつく頼りない廃道が唯一の導線となる。
-->
ポッカリ口をあける廃道の入り口、クルマ止めがしてある。
ひと息ついていたら「四万十町」と書いたバンが近づいてきた。
侵入者への警告か?と焦ったが、バンをおりた職員さんは歩いてクルマ止めを越えてゆうゆうデジカメで海を撮ってた。
チャリでどこまで行けるものか尋ねてみると、おそらく小鶴津の浜くらいまでは行けるだろうが落石も多くオススメはしないとのこと。
とりあえず不法侵入ではないようなので、行けるところまで行ってみるか。
いきなりノーガードレール、左は断崖絶壁である。
恐ろしくてチャリにまたがることができず、しばらく押して歩いた。
クルマで通っていた方は相当に魂を削られたはず。
何しろ対向車が来たら互いに南無三、引き返したくともUターンかなわず南無三なのだ。
チャリとて落石にタイヤをとられて、海側の宙空に足を着いてしまおうものならまた南無三である。
悪い冗談のような離合スペースである。
鉄板は朽ち、落石で穴があいている。
まるでエルカミニートデルレイの桟道だ。
退避した者の車窓は空しか映さず、さぞ尻のすわりが悪かったろう。
離合するわずかな時間、この鉄板に命を預けるわけだ。
笑顔で片手上げてかつププとかクラクション鳴らしてんと早よ行け、そう願ったのだろう。
-->
悪夢のような絶景はまだまだ続く。
鉄板で補修してるのは一度ごっそり持っていかれたからか。
土台が残っているかどうかは怪しい。
南無三を唱えて山寄りを走り抜けるだけ。
超キワどい絶景である。
落ちたら死ぬ。
小鶴津の集落のある浜が見えてきた。
大鶴津はまだその先である。
-->
と思ったら崖崩れで行き止まり。
小鶴津を目前にガッカリしたようなホッとしたような。
おそらくこの先整備されることはないだろうから、小鶴津・大鶴津は完全に封印されたことになる。
というわけで2021年7月現在、クルマでのアクセスは完全NGである。
小鶴津の集落まで出られたなら転回もできようが、この状況では来た道を1km近く恐怖のバックを強いられる。
崖崩れの先にはでっかい岩も落ちてた。
撤退じゃ〜。
大鶴津には2010年代まで人が住んでいたらしい。
最近の話だ。
半世紀ほど昔には大鶴津に原発建設の話が持ち上がったこともあるとか。
結局立ち消えになったのだから、後世の県民の不要な分断を免れたわけだ。
ここをクルマが行き来した時代をボクは容易にイメージできない。
進退窮まったとしても誰も助けることができないし、スマホが智慧の海に繋がったとて解決できない困難がここにあるからだ。
そもそも圏外である。
ボク含め、現代人って生物としてのポテンシャルを半分も発揮できてないんじゃないかと思う。
GoogleとYoutubeで万事解決、な他力本願スタイル。
では、当時の小鶴津・大鶴津の住人たちはどうしていたのか?
祈ったのである、南無三と。
南無三と祈り、無意識に第六感も使いまくって家路を急いだのである。
※行ってみようなどという物好きはそう多くなかろうが、もし行かれる場合は自己責任の重みを今一度お考えのうえ赴かれたし。ここに郷里をもつ方への敬意も忘れてはいけない。崩れやすい地質で上からは落石、足下は土台がごっそりと無い可能性も考えられる。ガードレールのない箇所も多くチャリでバランスを崩したらと思うと生きた心地がしない。絶景だが運が悪ければマジに死ぬ場所である。