誰も行かない日本一の風景〜宇和海編〜①「外泊」

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ここは愛媛県愛南町にある「外泊」という集落。

もはやその注釈が枕詞である。

「がいはく」ではない、「そとどまり」と読む。

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石垣の里として知られ、谷に沿って石垣を組み、段々畑状に民家がひしめき合う光景。

今も数件の民宿が営んでおられる。

ここが集落の目抜き通り。

クルマ1台が通れるだけの幅である。

横道に入るとこの通り。

人ひとりが通れるだけの幅しかない。

漁港の集落はどこもそうだ。

通路の幅を最小限にすることで民家はひしめき合うような格好となり、強い海風に耐えようとしている。

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石垣もまた、強風から家を守るバリケードである。

ふと空き地が現れ、公園ぽくなっていた。

石垣を少し凹ませて「遠見の窓」としてある。

これ観光向けでなくて、実際に外泊に伝わる意匠である。

外泊で暮らす男性の多くは漁師であり、妻が炊事をしながら夫の船が帰港するのを確認できるよう工夫されているのだ。

そして窓辺に置かれているのは「石雛」とよばれる石細工である。

気がつけばそこかしこにあった。

もとは夫婦円満を願うものだったろうが、今ではちょっとした石アートになっている。

軒先からかすかな生活音は聞こえるものの、集落を歩く者はボクらだけ。

とても静かで、繊細で、個性的で、ただただ美しい。

過去には若き日の安藤忠雄や、漫画家のつげ義春もここ訪れたという。

今は年間どのくらいの観光客が訪れるのだろう。

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散策しつつ妄想。

集落のあちこちに石雛や石アートを仕込んで、それを探し当てるという遊びは楽しそうだ。

そうすればお休み処やカフェが必要になってくるだろう。

空き地を1泊1組限定のキャンプ場にするのもいい。

猫島が人気だが、石垣と猫の組み合わせなぞ鉄板のインスタ映えだろう。

漁村だから魚は間違いない。

土地独特の食べ方や調理法もあるのだろう。

あなた方が当たり前だと思っているものを、思い切って売り出してみてはどうか。

いや、よそう。

雑誌やワイドショーで大仰に喧伝され、イナゴの大群に蹂躙されるのがオチである。

集落に1軒カフェがある。

「だんだん館」。

窓から入江を望む絶景で軽食が頂ける。

ビールもあった。

漁港にある「休憩所しおかぜ」。

クルマはここの駐車場に停められる。

お隣の中泊地区の人口増加により、家族の次男、三男をこちらへ移住させたのが外泊地区の興りである。

何かのお祭りだろうか。

集落全体がライトアップされた写真が飾られていた。

そこまで期待していたわけじゃない。

何気なく立ち寄ったすっぴんの風景に心奪われるというのは最高の旅行体験である。

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