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港町モダン
港町というのはおしなべてモダンである。
人や文化がよそから出入りする窓口であるため、誇り高い風土が生まれやすく、文化水準も高い。
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徳島の海の玄関口
小松島港を擁する徳島県小松島市は、かつて徳島の海の玄関口として栄えた港町である。
大阪とを結ぶ小松島フェリー(1993年廃止)があり、和歌山を結ぶ南海フェリー(現在は徳島港発着)があり、市内には港へ向かうための専用鉄道まであった。
こうした街にはド渋い物件が息づいている。
文化水準のモノサシは?
ところで文化水準を計るモノサシとは?
舶来の品?舶来の食?身なりのよさ?建築様式のモダンさ?
個人的には一杯呑み屋の料理の盛り付けに文化水準を感じることが多い。
どこか品があるというか。
このあと紹介する赤いのれんの食べログの写真を見てボクは、ああやっぱり港町だなと思ったのである。
大阪からは「とくしま好きっぷ2000」が便利
さて小松島市、今回はJR牟岐線の南小松島駅前の二条通や千歳橋筋といったかつての繁華街を中心に巡る。
ちなみに大阪からだと南海電車と南海フェリーを乗り継ぐとくしま好きっぷ2000を使って徳島まで2000円。
JRで徳島駅から南小松島駅までは片道260円、20分ほどの距離なので、かなりお手軽に遠出の旅を楽しめるはず。
初夏の頃、ポケットにスマホと替えのパンツだけ突っ込んで、身軽にサンダル履きで呑みに繰り出すなんてのはオツこの上ない。
ではどうぞ小松島へ。
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【1】味11番地
小松島に興味を持つキッカケになったのがここ。
長屋みたく連なった2軒のお店。
左が「山茶花」、右が「味11番地」である。
予約のため「味11番地」へ電話をするとなぜか「山茶花」に繋がるらしい。
が心配は無用、そのまま予約は可能だ。
実は「山茶花」は「味11番地」の大将の奥様が経営するお好み焼き屋で、電話を共用してるのだ。
ただこれだけのことにたまらなくグッとくる。
港町ゆえに魚介系は充実。
オムライスもイケるらしい。
屋号の由来は住所の番地から。
【2】焼鳥よこた
問答無用の渋さ。
「焼鳥よこた」。
創業は昭和30年代というから、小松島市の栄枯盛衰を知る生き証人といってよい。
朝10時から営業してるってのも、朝な夕な船が出入りし、港湾関係者が立働く街の名残りなのかも知れない。
昼メニューの鳥天ぷら丼は一度食べてみたい。
【3】大正館なつ家
大正期に建てられた豪商の古民家をリノベーションしたシェアカフェ、シェアスペース。
カフェは将来お店を持ちたい人が日替わりで入るチャレンジショップになっている。
お店に入らなくとも利用できる休憩所では小松島市の観光・グルメ情報を発信、トイレも使えてネイティブとビジターが交流できる街のクロスポイントである。
徳島県の「まちの駅」に指定されている。
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【4】赤いのれん
まずは食べログの写真をご覧いただきたい。
一枚一枚レモンスライスを敷いたお造り、カツと天ぷらの中間のような串揚げ、ゴマの付け方に品漂うおにぎり、、、
どれも割烹板前ならではのクラシカルな映えが光る。
串揚げには和風ツユ、酢醤油、ソース、塩が選べ、どのネタにどの味付けが合うかはオバちゃんが教えてくれる。
まずは串揚げ数本で生ビール2杯、お造りや貝ものを追加したら日本酒に移行、腹が物足りなければおにぎりをもらい、〆は絶品らしいみそ汁の中からなめこ汁を。
行ってもないのにすでに流れるような呑みフローができあがってる。
【5】日の峰温泉
港町、小松島市にも数件の銭湯があったようだが、駅周辺で現存しているのはおそらくこの日の峰温泉だけ。
定休日は3、13、23日と3のつく日。
実はこれ徳島の伝統らしく、小松島市に限らず徳島の銭湯は3のつく日に休むところが多い。
【6】まるか
若い店主がやってるカオマンガイのテイクアウトのお店。
「海南チキンライス」と聞いて徳島の旧海南町を連想したが、「海南」とはカオマンガイ発祥の中国の海南(ハイナン)島のことである。
昼過ぎには売り切れることもある人気店らしい。
どっさり鶏肉ののったカオマンガイもいいし、そこへドバッとかけるマレーシア風チキンカレーてのも滅法美味そうだ。
テイクアウトして港でワシワシ食いたいね、缶ビール片手に。
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【7】木屋
変哲のない大衆食堂なんだが、こういう店に目がない。
やってるんだかやってないんだか、というやつ。
日替わり定食をメインに、うどん数種に巻き寿司というシンプルなメニューもいい。
手書きののれんも超味がある。
【8】松本中華そば店
徳島ラーメンには茶、黄、白の3系統があるらしい。
茶系しか知らなかった。
いや奥が深い。
ここ「松本中華そば店」は白系。
スープは白濁、豚バラ肉を使う茶系に対し、白系は脂身のないチャーシューである。
小松島市には同じく白系の「岡本中華」というのもあり、屋号+中華というパターンが面白い。
ちなみにどちらも中華料理は扱ってない。
【9】コックドール
ネット情報は少ないが、カツカレーがかなりそそる店。
旅先で立ち寄る地カレーというのは趣がある。
シェフがお亡くなりになって1度閉めていたが、常連さんの要望でご家族がレシピに忠実に味を再現しているとのことだ。
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【10】津久司蒲鉾
徳島の駄グルメと言えばフィッシュカツ。
魚のすり身にカレー粉で味を付けフライ風に揚げたもので、オカズというよりオヤツや酒のアテにしっくりくる。
その元祖とされているのがここ津久司蒲鉾さん。
近年は県外のスーパーでも見かけるようになった。
そのままでも美味いが、フライパンで焼いて一味マヨなぞを付けるのもまたいい。
朝8時~14時まで直売もやっているので、タイミングがよければ揚げたてを食べられるかも。
【11】国鉄小松島線 小松島駅跡
小松島港へのアクセス線として開通した国鉄小松島線。
旧国鉄の中田駅から小松島駅までのひと駅を結ぶ日本一短い路線だった。
1985年に廃線になっており現在、小松島駅は小松島ステーションパークとして、廃線跡は遊歩道として整備されている。
遊歩道には信号機の遺構が残っており、往時を偲ぶよすがとなっている。
宿泊
JR南小松島駅近くで手頃な値段の宿を見つけられなかった。
旅客フェリーの廃止、遍路道から微妙に外れた立地であることが影響しているのかも。
港周辺でいつくか旅館はあるのだが、HPがなくWeb予約に対応していないところが多いため、値段はおろか営業しているのかどうかも判断つかなかった。
電話番号は出てくるので直接確認するしかないか。
編集後記
かなりしばらくぶりの街ポテ記事である。
街ポテ記事は時間がかかるため、なかなか手が回らなかった。
小松島は寂れた小さな港町であるが、興味をそそる店が多く、1泊程度では到底満喫できない魅力ある街である。
安宿に逗留し数日かけて全部まわるもよし。
1、2軒呑み喰いし、後ろ髪引かれるのもまたよしである。
関西方面の方はぜひとくしま好きっぷ2000を使って訪れてみてほしい。
街ポテの記事を作るのはとても楽しい。
独り旅というより、火曜サスペンス劇場に出てくる犯人のようなヤサぐれた逃避行に出たくなる。