とある夏の日、インスタで見たこの投稿。
「真夏におでんかよ!」というツッコミはとりあえずスルーして、とりあえずこのヴィジュアルに度肝を抜かれた。
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ボクの知ってるおでんとはかなり違う。
鍋の中はダシとかツユとかいうレベルを逸脱してドロみを帯びたものだ。
沼、そう、おでんの沼だ。
あまりのイカツさに心を鷲掴みにされたボクは、畏怖と敬意を込めて「悪魔の沼」と呼ぶことにした。勝手に。
別件で愛媛に行ったので、悪魔の沼でちょい呑みと洒落込む。
お店の屋号は「かどや食堂」。
ちなみにこの「かどや」という屋号。全国津々浦々に存在するが、おしなべてアタリの店が多いのは何かの法則だろうか。
店内は広くゆったりとしてる。
青いイスや丸テーブルが洋食屋チックだったり、
和風の小上がりがあったりと、その和洋折衷ぶりに積年の歴史を感じさせる。
そして……、
これが悪魔の沼だ!
ドロドロして見えるのはたっぷりと浮いた背脂である。
もうひとつ、悪魔の沼の景観を特徴づけるのが、おでんにはオーバースペックとも思える長い串。
占い師が使う筮竹(ぜいちく)みたいだ。
寄れば目を突かれそうなほど長い串はもしかすると、アツアツのおでん鍋に幼な子を近づけない仕掛けなのかも知れない。
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皿に盛るとこんな感じ。
アゴを突っつく串を払いのけながら一杯やるのも風情がある。
高知もそうだけど、四国のおでんは串に刺したセルフ形式のところが多い。
で、思わずニヤリとさせられるのがコンニャクの位置。
決まって串の先である。
コンニャクは身が締まって抜けにくいから、持ち上げた時に串からネタがすっぽ抜けないためのキャップの役割なんだろう。
中にはキャップに特化した小さな玉コンニャクを使う店もある。
そう言えばチビ太のおでんも先っぽはコンニャクだな。
悪魔の沼に威圧されてカラシを塗るのすら忘れてたけど、ねっとりと背脂がまとわりついた薩摩揚げ、芯までしゅんでるジャガイモ、どれも滅法美味かった。
インスタ投稿者の@chelsea.girl.yさんによれば、お店のある通りは新地商店街といい、土曜となると夜市も立つかつての目抜き通りだったらしい。
子供の頃は夜市に繰り出せば、かどや食堂で中華そばを食べた思い出があるのだと。
こちらがその中華そば。もちろん背脂入り。
溶けた背脂が表面をコーティングしててアツアツ、本気で美味い。
同じくラーメンに背脂を使う尾道とは瀬戸内海を挟んでお向かいさんなので、食文化の交流があったのだろうか。
、にしても、おでんに背脂とは目からウロコのアイデアである。
かどや食堂でなければ食べられない唯一無二のおでんである。
SNSが発達した昨今「ご当地グルメ」よりネイティヴからのタレコミが無ければたどり着けない「ネイティヴグルメ」こそアツいのだ。
ネイティヴは背脂たっぷりのツユはオタマですくっておでんにかけて食べるんだそうだ。
それ白飯にかけたら美味いだろうな〜。
@chelsea.girl.yさん、近々悪魔の沼で一杯やりましょうね。