高知市御座の隠れた名店、喫茶「和泉」さん。
モーニングタイムはいつも満員御礼、ネイティブオンリーの人気店である。
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中央に円形のカウンター席、それを囲うように弧を描いて並ぶテーブル席が不思議なムードを醸す。
その配置の理由はこれ。
建物が八角形なのである。
モーニングは6種類。
高知のモーニングは多メニューの傾向がある。
宿毛にある喫茶店「花時茶」などはモーニングメニューだけで24ページ、その数は60種類を超えている。
ところでD、和風モーニングとE、朝定食の項に注目されたい。
「スモール付」とある。
これぞ高知モーニングカルチャーの秘儀中の秘儀である。
何なのかは後ほど。
ボクは朝定食。
アジの干物、だし巻き、白和えにメシ、みそ汁、たくあん。
干物は注文が通ってから焼いてくれるからホクホクである。
カミさんはタマゴのホットサンド。
パン食モーニングにみそ汁が付くというのも高知モーニングの特徴。
みそ汁の具にソーメンをぶっ込む店もある。
開けた窓から朝の陽射しと初夏の風が心地よい。
最高のモーニングタイムである。
そして、食後に持ってきてくれたこいつが「スモール」である。
ようするに小っちゃいコーヒー。
食後のデミタスコーヒーのことを高知では「スモール」と呼ぶのだ。
お茶が付いてるんだからコーヒーも欲しいならプラスいくらかでいいのに、「スモール」としてサービスするあたり高知モーニングの粋を感じるところ。
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ありゃ?「和泉」さん、なんと閉店のご挨拶とな。
聞けば経営者は変わるものの屋号は「和泉」のまま、メニューもそのままに引き継がれるとのことである。
常連さんが口々に「さびしくなるね」と、柔和なタイプのご主人に声をかけていた。
ボクらと入れ違いでお客さんはひっきりなしに入っていく。
こうしたローカルで愛される喫茶店が単に閉店するではなく、引き継がれて残るというのは喜ばしいこと。
体力的にはもう閉めたいけど、常連さんの要望に応えて続けてる。
そんな店が全国どのくらいあるのだろう。
大阪堺の「銀シャリ屋 ゲコ亭」の例をみるまでもなく、そうした店を引き継ぎ、サービスの質を下げず、個性は消さず、店の空気を残すというビジネスはこの時代ありなんじゃないかと思う。
元経営者、常連客、後継者、各々がWin×Win×Winのビジネスではなかろうか。