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行く価値のない街なんてない
「街のポテンシャル」の記事を作っていてつくづく感じるのが、行く価値のない街というのは存在しないということ。
その街の調査を始めてすぐは、興味を引くものがなにも出てこないことも多い。
「街が小さすぎたかな。ここはボツかな」と感じること毎回なのだが、あきらめず丹念にGoogleマップを歩き込んでいると必ずひとつやふたつ、みっつやよっつ自分の好奇心に引っかかるネタがヒットするから面白い。
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街ネタの鉱脈を掘り当てるワクワク感
今回の一関市もそう。
ファーストインプレッションは凡庸な東北の田舎町だったのが、いったん鉱脈を掘り当てれば唯一無二の物件がゴロゴロとした、死ぬまでにいっぺん行くべき街になってる。
この採掘のワクワク感こそが「街のポテンシャル」たる由縁である。
どの街にも資源は眠っている。
【1】浮蓮渡
いきなり珍走団的なアテ字である。
お店は喫茶店で 「ふれんど」と読む。
店内はスナック風らしいがなにせネット情報が乏しく、メニューに生ビールがあることをつきとめるのにも苦心した。
一関市にごあいさつの一杯はここで。
ところで市名は「一関市」、JRの駅名は「一ノ関駅」と表記揺れしてるのも面白い。
【2】フレンド
こちらも喫茶店で店名は「フレンド」。
メニュー豊富なパフェが地元で人気のお店。
定番のチョコやイチゴの他にチョコミントやババロア、プリンがのったムーンライトなんてメニューも。
中身は生クリームよりもアイスクリームがメインのタイプである。
フードメニューも充実していてラーメン、カレー、チャーハン、ハンバーグ、グラタン、揚げ物、ひと通りなんでもある。
缶ビールは600円と割高。
【3】ジャズ喫茶ベイシー
タモリも常連だというジャズファンには超有名なジャズ喫茶。
ウィキペディアページまであって、もはや一関市の観光名所と言ってもいいほど。
蔵を改築した店内でレコードをかけるわけだが、とにかく音の良さに鬼気迫るものがあるらしい。
レコードの音が立体的に鳴り、目の前でライブ演奏していると錯覚させるほどの音響設備をもつ。
チャージとしてコーヒー付きで1000円。
値は少し上がるがビールや洋酒も選べる。
ビールをちびちび呑りながら、その音響を体感してみたい。
知ってる曲がかかったなら、音の違いがよくわかって楽しかろう。
店名はジャズピアニスト、カウント・ベイシーから。
【4】磐井焼
色バランスが素敵な看板である。
文字にはネオン管が貼ってあり夜は光る。
「磐井焼(いわいやき)」とはいわゆる大判焼きで、一関市を含む岩手県南部をさす磐井地方の名を冠している。
クリ入りとバター入りがある。
バターがけっこうな量入っててジュワッと皮にしゅむらしいので、ウェットティッシュ用意のこと。
また、安易に割ると溶けたバターがピュッと飛びでたりもする。
営業期間は秋風の吹き始める9/15から、Tシャツ短パン目前の4月末日まで。
暑いのはお嫌いのようで。
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【5】一BA
「一BA」は「いちば」と読む。
一ノ関駅前で空き店舗になっていた元薬局をリノベーションした、地域活性の総合拠点。
1階はコワーキングスペースやワークショップなどもできる多目的なスペース、それに地元の物産ショップや観光案内所といった道の駅のような機能も併設。
2階は旅行者向けの民泊施設になっており、観光客と地域の人材が渾然となった活気ある「市場」のような場になることを目指す。
こうしたスポット、地方の小都市に急激に増えてきてますね。
【6】ひぐれ小路
線路沿いのにひっそり佇む、戦後の闇酒場の香りがする横丁。
左右が更地になっているので、ポツネンと取り残された格好なのが哀愁をそそる。
ネット情報がほぼ無いので、テナント詳細は不明だがスナックメインの模様。
日が暮れて、灯が灯ったアーチを見てみたい。
【7】一関シネプラザ
住宅街に溶け込むようにしてある映画館。
ぱっと見は普通のアパートにしか見えない。
なぜこんな繁華でないエリアにあるのかというと、元々ここにあった酒蔵の倉庫を改造した映画館を前身としているためである。
それにしてもこのような地方都市にシネコンでない映画館が現存しているのは珍しい。
一階に居酒屋が入ってるのも渋い。
【8】キッチンよしだ
呑み屋長屋の一角にある大衆食堂。
長屋には「新宿主」や「ホワイトからす」など、けったいな名前の呑み屋が並ぶ。
店内にタモリが来店した時の写真が飾ってあるらしい。
先述のジャズ喫茶ベイシーが目と鼻の先なので、腹ごしらえに立ち寄ったのだろう。
【9】あさひ鮨
メニューにある「狂人巻き」、「時代巻き」が好事家をざわつかせる寿司屋。
実はここもジャズ喫茶ベイシーつながりである。
ベイシーの常連だった色川武大、村松友視のそれぞれの代表著書「狂人日記」、「時代屋の女房」からの引用である。
色川武大にいたってはベイシーが好きすぎて一関に移住までしている。
【10】とんちゃん
さて、ここからは酒場4連発。
どれも個性的な呑み屋ばかり。
まずは焼肉とんちゃん。
朝11時から深夜までの通し営業、なおかつ駅前という利便性。
一関にごあいさつの一杯はここで呑るのもあり。
アテはホルモン煮込みで。
焼きものにクジラ、ワニ、ダチョウといった変わり種があったり、鬼なき湯麺、エイリアン焼き、ドラゴンの爪といったおふざけメニューがあったりと楽しい。
焼肉屋なのに海老天そばやカレーライスもある。
カレーは大皿で1280円、ハーフが680円。
ハーフといっても大皿のそれなので、ハーフが普通サイズである。
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【11】焼き鳥山平 (さんぺい)
一関の人気焼き鳥屋。
すぐに満席になるようなので、よそ者はオープン直後を狙いたい。
カウンターだけで14席あるので、一人呑みにも最適。
レビューを見ると焼き鳥の身が小ぶりとの不満を散見するが、ボクはそのほうが好み。
手羽先、ぼんじりが絶品らしい。
ビールはサッポロ。
焼き鳥以外にもナマコ酢、ホヤ酢、鱈菊の刺身などがあり、いかにも東北のグルメだなあと旅情を感じさせる。
鱈菊(たらきく)というのは東北の太平洋側の言葉で白子のことである。
【12】やきとり道場
焼き鳥、豚ホルモンは1本70円からと激安の居酒屋。
ビールは瓶のみ。
レビューを読むと寡黙でややクセの強い大将みたい。
一升瓶まるごと凍らせて、酒をシャーベット状で出すスタイルはこの店オリジナル。
先に焼きものを頼んでおいてから、モツ煮込みと瓶ビールではじめるのが常連スタイル。
メニューにラーメンがあるのももはや驚かない。これが一関スタイル。
岩手の郷土料理「かにばっと」も大いに気になる。
食べログやGoogleマップでは屋号が「焼き鳥道場みちのく」なのだが、看板には「焼き鳥道場」としか書かれていないのもクセが強い。
【13】樽や
それにしても、この街の規模にして興趣をそそる呑み屋がこれだけ出てくるのが一関のポテンシャルである。
すべてまわろうと思えば一泊二日では足りない。
ここ「樽や」は個人的に良店だと踏んでいる店。
ネット情報はほぼないけど、ボクの酒場嗅覚がそう言ってる。
炉端スタイルで串ものから刺身まで。
【14】郭公屋
厳美渓(げんびけい)は市街地から8kmほどの景勝地。
ここの名物が郭公屋(かっこうや)の空飛ぶ団子である。
川の対岸にあるお店からワイヤーが張ってあって、カゴで団子をデリバリーするのだ。
まずカゴにお金を入れて木槌を鳴らしてお店の人に合図。
するとカゴを引き、そこに団子を入れて戻してくれるシステム。
棒状の団子を糸で輪切りにして串にさしてるから、球形ではなく円盤型。
みたらし、胡麻、アンコの三味である。
【15】長徳寺
数年前、センセーショナルな裸男ポスターで物議をかもした「蘇民祭」を覚えているだろうか。
あれは同じ岩手県の奥州市だったが、一関市ではこの長徳寺で毎年3月に「蘇民祭」が行われている。
【16】興田神社
で、こちら興田神社の「蘇民祭」は毎年1月。
寺だけでなく神社でも行う神仏習合の祭りである。
【17】@アットホテル
駅周辺で5000円を切るビジネスホテル、宿がほとんどみつからなかった。
ここはシングル1名、4900円。
ツインを2名で利用なら1名分は3950円である。
駅近でこの値段ならボクはここにキメ。
姉妹店の「@ビジネスホテル一関 三関店」なら、駅裏1.6kmのムードのない立地ではあるけど、シングル1名、4450円。
ツインを2名で利用なら1名分は3245円とさらに格安となる。
一関市の地酒
真っ先に名前があがるのは世嬉の一酒造の「世嬉の一」である。
ここは元酒蔵を利用して酒の民俗博物館をやったり、自社クラフトビールを作ってビアレストランをやったりしてる。
山椒を使ったビールというのは一度呑んでみたい。
磐乃井酒造は商品のネーミングが面白い。
看板商品は「磐乃井」であるが、「名無し」とか「百磐(ひゃくばん)」、「零磐(ぜろばん)」などのラベルが付いた酒瓶はつい手に取りたくなる。
他にも両磐酒造の「関山(かんざん)」、「奥州のおっほー」がある。
「おっほー」とはフクロウのことで、どぶろくの隠し意味でもあるらしい。
実際どぶろくに近い活性濁り酒で、フタにガス抜きの穴があいていて横倒し不可なのが面白い。
山形屋(岩手県なのに)という酒店が作るオリジナル焼酎「エルシド」というのも気になる。
国道沿いに出てる「幻の焼酎」という看板はネイティブには有名らしい。
一関市しばりでもこれだけ豊富に銘柄がある。
呑み屋へ繰り出せば、他にも見たことのないみちのくの酒が出迎えてくれるだろう。