訪れたい場所というのは好奇心のおもむくままに膨大で、よほど根を詰めねば健在のうちに回り切れるものではない。
ずいぶん前から行きたいリストに入っていたのが高知県田野町にある「茶房千福」。
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大阪に住んでた9年前、急遽思い立って行き当たりばったりで訪れた高知。
そのとき偶然見つけたのが今はなき「コーヒー館岩屋」であり、姉妹店だとショップカードをもらったのが「茶房千福」だった。
純日本風の屋敷造りに洋式のダイニングテーブル、畳間に赤カーペット敷きというのは明治から大正にかけてのモダン嗜好に見られる様式。
かつて京都壬生にあった「カフェド武家屋敷」も同じしつらえだったのを覚えている。
建物は国の有形文化財に指定されており一見の価値がある。
8畳ほどの部屋を格子状に配置した造りになっていて、フスマは取っ払ってある。
奥の部屋は畳敷きに洋風の照明という組み合わせ。
造りや意匠を眺めていて高知出身の作家、宮尾登美子の小説「仁淀川」の一節を思いだした。
農家の家の作りというのは、どこも大てい田の字建てになっており、それは家で客宴などのとき、境の襖障子を取っ払えば広間になるためのものだが、綾子はこの作りが以前から嫌いで落着かなかった。
宮尾登美子 「仁淀川」より
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ボクらは縁側の席へ。
コーヒーのメニューに「コーヒー館岩屋」の名が残されている。
和スイーツを中心に土佐ジローの卵を使った手作りプリンから、ホットサンドや五目炒飯といったフードメニューも充実。
旅の途中で「コーヒー館岩屋」を見つけたときは興奮したものである。
海蝕洞をカスタマイズして喫茶店を営業するなぞ、どうかしてるぜ高知人と驚愕したものだ。
国の文化財でもある「茶房千福」とそんなアバンギャルドな店が姉妹店とは。
やっぱりどうかしてるぜ高知人。