
高知に移住してそろそろ9年。
実は香川をあまりディグれてなくって、気がつけば手付かずの荒野が広がっている。
高松市の西側なぞボクにしてみればもはや秘境だ。
香川は近くて遠い。
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「讃岐うどん」のやや狂気じみた文化には興味があるので、来年は遅ればせながらうどん巡りから始めてみたい。
西讃の観音寺市もうどん激戦区だが、駅前に角打ちがあることはあまり知られていない。
「大塚酒類米穀店」という。

というか今はもう酒も米も小売はしておらず、角打ち部門だけが残った格好だ。
缶ビールはあるのに、持ち帰り客には売らないのだそう。

ボクのような一見者も快く受け入れてくれたママさんは御歳80ウン歳。
見てよ、このカウンター。ママさんがここへ嫁いできたときにはすでにあったというから60年以上前の代物である。
これまで数千、数万の酔漢たちに愛撫されてきたであろう一枚板は、角という角がとれツルリと黒光りしていた。
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ここはカラオケもできるらしく、ボクが来る前に数曲歌って呑まずに帰った常連さんがいたそうな。
歌好きが高じてママさんなんと「愛のコリーヌ」という歌をリリースなさっている。
もちろん「愛のコリーダ」のもじりなんだが、おふざけのパロディで済まないところがすごい。

歌詞はママさんとご主人の馴れ初めを綴ったものであり、その舞台が観音寺市に実在した喫茶コリーヌだというのだ。
「愛のコリーヌ」、あまりにも無理がなく、あまりにできすぎている。
できすぎといえば、このジャケアートも完成度高すぎないか。

似顔絵はママさんの特徴をとらえまくっているし、ビビッドな色使いも目を引く。
作詞・作曲の永田壮一郎さんはじめ、凄腕プロデュースチームの仕事としか思えない。
自主制作の7インチがあれば買っていたな。

土地の古老から土地の古い話を聞くことが好きである。
酒を呑みながらならこの上なしだ。
またいずれ、ママの話を聞きに来ねばなるまい。
その時は「愛のコリーヌ」を生で聴かせてもらおう。