チェーン店が林立する国道56号線の高知市区間、通称「土佐道路」のロードサイドで、破れたオーラを惜しげもなく放射しまくっている店がある。
これは店舗なのか屋台なのか?
装飾テントには「炭火焼・ホルモン」と殴り書かれたのみで、そもそも屋号が判然としない。
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幹線道路沿いということもあり、クルマから見たという方は多いだろうが、行ったという話は聞かない。
この近所の方の話では、近すぎて逆に行きにくいのもあるし、しばしば雄叫びが聞こえてくることもあるのだという。
そんなこんなで戦々恐々と入店したが、麦のソーダ割りをお願いすれば「レモン入れる?」と聞いてくれるし、メニューに悩んでいれば「うち初めてやったら煮込みは食べてほしいねー」など一見 のボクらにウェルカム対応。
緊張の糸が解けていく。
メニューも好事家をワクつかせるに充分である。
魚肉ハム、レタスハムエッグ、きゅうりとフジッコ、ハツみりん漬け……。
ペラ焼きを出すあたり高知県西部のご出身だろうか。
ポークチャップやポークナポリタン、エビフライなど洋食系も大将の出自が垣間見えるようで興味深い。
おすすめの煮込みはモツが新鮮で滅法美味い。
これなら看板にある炭火焼きも美味かろうとハラミを頼んでみたが、煙がすごいから夏場しかやらないらしい。
ザンギを頼んだら手羽先だった。
改めてメニューを見ると「ザンギ(骨付き唐揚げ)、4本¥600」と「骨抜き手羽、1本¥200」という2つのメニューがある。
骨付きはザンギ、骨抜きは手羽と呼ぶ理由は大将のみぞ知る。
骨抜きのほうが割高なのは骨を抜く手間賃か。
お店を始めて23年になるらしく、その前は大阪釜ヶ崎でイモ天の屋台をされていたとか。
日曜市では行列必至のイモ天も、大阪ではさっぱりだったらしい。
界隈は安くて美味い串カツのメッカだし、サツマイモも串カツになってたりするのでさもありなんかな。
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さて、Googleマップでは「炭火焼・ホルモン」となっているこの店の屋号であるが、大将の頭上に掲げられた扇子をご覧いただこう。
「おそ松」と書いてある。これが本当の屋号だった。
「お粗末なやつ」あるいは「遅くまで待つ」という意味が込められている。
営業時間は18:00〜24:00。
定休日などは決めておらず、雨が降ったら休むのだという。
面白いのはなんとこの店、公道の上にあるのだ。
なんでも「おそ松」の前に入っていた店が、この状態で営業しており許可も下りていたのだが、大将が入るときに公道を跨がないよう指導が入ったらしい。
前はOKだったものが店変わればNGというのは納得いかないと抗議したところ、役所側が折れたらしい。
店は極薄建築である。ドア1枚分の厚さしかない。
2階は寝泊まりできるようになってるみたい。
ちなみにトイレはちゃんと店内にあります。
「湯豆腐でも出そか」というのでお願いしたら、この通りしっかり鍋という按配。
とまぁどんな球でもイレギュラーさせてしまう凸凹しまくった個性は、都会的でのっぺりとした店では決して出せないものである。