大阪西成にある「深川」というおでん屋。
立ち呑みでキャパは4人。土日の昼だけ営業されている。
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手前の黒いTシャツの2人組は冷蔵庫をテーブルに、奥の白いTシャツの2人組はなにがしかの台をテーブルにして飲食している。
一歩下がった柄シャツのおっちゃんは、テイクアウト待ち。
そう、テイクアウト客もひっきりなしだ。注文は「2千円ぶん」とか「4千円ぶん」とか価格指定なのが独特。
先日、大阪市内を当てもなくレンタサイクルで流していたとき、偶然この前を通りかかって、あまりに浮世離れした光景にヒュッと息が止まりそうになった。
それにしても、こんな最後の大物みたいな店がまだ残っていたとは。
以前この少し南に住んでいた事もあって、よくウロウロしたものだったが全然知らなかった。
まあその頃、90年代後半〜00年代初頭にかけては、大阪の下町にはまだこうした破 れ酒場が多く残っており、深川だけが異彩を放つ時代ではなかったのだろう。
立地も面白い。
地図を見ると深川から北東方向に、建物のない空白のラインが伸びているのがわかる。そして南西方向にはちょうど深川を起点にカクッと折れ曲がって地下鉄堺筋線が続いているのだ。
このライン、何かと言えば南海天王寺支線の廃線跡である。
現役で走っていた頃を知ってるので、南海電車が深川をかすめて走っていた姿を想像すると感慨深い。
フェンスに覆われたところが線路跡。すぐ右に深川が寄り添う。
これだけ年季の入った店だから、同じく年季の入った梅干し婆さんが仕切っているのかと思いきや、40〜50代くらいと見受けるお姉様2人での切り盛りでした。
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肝心のおでんはというと、大阪では珍しい甘いダシで、世辞ではなく本当にうまい。
店内は写真NGだからヴィジュアルがないのが残念。
昔の西成は一歩裏道に入れば「にいちゃん、覚◯剤?マ◯ファナ?」と、やおらポップに声をかけられたもので、それが西成警察のすぐ裏手というロケーションだったりして「伊丹十三の映画かよ」と独りごちた思い出がある。
今でこそ観光客が闊歩するセーフティな街へと様変わりしたけれど、深川のような店が生きながらえる西成という街は相も変わらずプリミティブでビザールな雰囲気を湛えているなあと思う。